今月のお手前は「茶杓飾り」。
設定は「雲錦の茶杓を入手し、初使用ということで、茶筅を改めました」という飾りです。

春といえば桜、また今年はいつになく、桜を愛でる期間が長かったように感じます。
平安時代には「春」と「秋」どちらが好ましいかを歌で競い合ったように、ここヒスイでも、棗や
茶杓、菓子器などを雲錦でしつらえ皆様方に春の景色と秋の風情の対比を楽しんで頂きました。

「雲錦」とは、お茶碗や塗り物に桜と紅葉が描かれている琳派の画風を写したもので、桜を雲、
紅葉を錦と見立ててあらわします。
他に花入れの形は尺八、ご銘は「閑坐」、閑坐(かんざ)とは、心のどこかに座して
欲が漂っていない、静かに座っているという意味があり、まさしく本日、允可状を授与される
皆様方の喜びに満ち溢れ、また凛とされておられるたたずまいそのものでした。
お軸は、茶道の真髄であります「和敬静寂」翠壽会長、自らお祝いにと筆を走らせてくださいました。
最後に、このたび允可状を授与された方々にお言葉を一言ずつ賜りましたが、感無量で涙ぐまれた
方もおられ、ご指導させて頂いた私ども感慨深い想いでいっぱいになりました。

またこのたびも、翠静先生のお手製による季節のもの「蕗(ふき)」がお干菓子代わりに出され、
また菓子器もその折には、「つわ蕗(つわぶき)」の器でお出し致しました。

また、公開講座前のレッスンでは国宝の井戸茶碗「喜左衛門井戸」を愛でる講義を開き、
主に林屋晴三さんの「名碗を観る」という著書を読み解きながら、ガラスケースの中ではなく、
実際に小堀宗実氏、千宗屋氏のお三方のお手に触れ、いきいきとして茶室に置き合わせている写真を
みながら、400年を経た今日でも、形あるもとして絶対的な存在感を持つこの名器に酔いしれました。

皆様、2コマ連続のレッスンを熱望下さり、お茶のお手前のお稽古はもちろんですが、
日本文化や歴史に造詣の深い翠鏡先生のお話しを一字一句、聞き逃すまいと
熱心にこの不思議な因果の茶碗の物語に耳を傾けておられました。

来週は久方ぶりに、翠耀先生による「俺の茶道」の復活です。
この度のテーマは「茶杓の種類とその制作プロセス」と題し、自ら茶杓作りもなさる
先生がどのようなお話しをして下さるか乞うご期待下さいませ!