9月の茶道公開講座のテーマは「賢治忌」でした。

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昭和8年9月21日に亡くなった宮沢賢治ですが、今年は生誕120年を記念して様々なイベントが行われています。
独特な世界観と思想を持ち、また生誕の地である花巻の農業にも真摯に取り組み、短い生涯を全力で駆け抜けていった宮沢賢治氏。

今回の茶道公開講座ではお道具を全て、大正13年(賢治28歳当時)発表の「春と修羅・序」になぞらえて準備し、お客様をお迎え致しました。

 

また、今回は9月のお点前「硯屏(けんびょう)」が披露されました。

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硯屏とは簡単に言えば風除けの役目をします。
茶筅を風に倒れないよう硯屏の陰に飾り付けます。
手の運びや水差しの蓋の扱いなど、普段のお点前と少し違っています。

棗(なつめ)や硯屏の並ぶ姿に、壮大な宇宙、「銀河」を感じます。

 

講座の最初は先生方のお手本から始まります。
正客役の先生は、亭主の心をくみ取りねぎらいの言葉を掛けます。

茶室は細部にわたり賢治の息吹を感じる装いになっています。

床には賢治が詠った二首。
「方十里 稗貫のみかも 稲熟れて み祭三日 そらはれわたる」
「病のゆゑにくもらん いのちなり みのりに棄てば うれしからまし」

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花入れは「交流電燈」という表現をイメージしたカガミクリスタルの器。
そこに、あけびの蔓だけを入れています。
春と修羅の一節、「あけびのつるはくもにからまり」になぞらえています。

香の入れ物は「心象スケッチ」という伊藤周作氏の作品です。
賢治は自身の作品を「詩集」と呼ばれることを好まず、心を自然に描いたものという意味で「心象スケッチ」と表現しとても大切にしていたようです。

硯屏には「ちがった地質学」という言葉をイメージして木が化石化したものを見立てました。
”どっどどどどうど どどうど どどう” と独特な風の描き方をした「風の又三郎」の一節も思い浮かばれます。

その他、お道具やお菓子の全てが賢治にまつわるエピソードを持っていました。

知れば知るほど奥行きが増す、宮沢賢治の世界。
子供のころに受けられた感銘と、現在のあなたのこころには、賢治の言葉はどう映るのでしょうか。

秋も深まりゆく季節に、今までに読み切れなかった歴史や日本小説、哲学本などに触れてみられるのも良いのではないでしょうか?

次回、10月9日(日)公開講座のテーマは「三夕の歌」。
来月もぜひお出かけ下さいませ。